特別養護老人ホームのサービス内容や費用相場、入居条件について
老人ホームと呼ばれる高齢者向けの施設にはいくつかの種類がありますが、その中でも代表的な特別養護老人ホームです。
特別養護老人ホームは待機者が多いとニュースなどで見かけることで気になっている方も多いのではないかと思いますが、どのような方が入居することができるのでしょうか。
また、入所するためにどれぐらいの費用がかかるかなど、料金の相場や他の施設と比較しながら、特別養護老人ホームのメリットなどを紹介していきます。
ぜひ施設選びの参考としてください。
特別養護老人ホームとは、介護保険制度がはじまる以前から、介護が必要となった高齢者が入居する先として運営されてきた施設です。
略して「特養」と呼ばれることも多くあります。
介護保険制度がはじまって以降、特別養護老人ホームを介護老人福祉施設と指定し、利用料の多くに介護保険を適用することができるようになりました。
そのため、介護老人福祉施設と呼ばれることがあります。
特別養護老人ホームを運営することができるのは、自治体や社会福祉法人に限られていることも大きな特徴で、公益性の高い施設と言うこともできます。
また、入居までの順番は申し込み順ではないため、地域によっては待機者が多く、すぐに入居できるわけではありません。
✔特別養護老人ホームは介護老人福祉施設とも呼ばれ、介護保険を利用できます
✔運営しているのは自治体や社会福祉法人などです
✔待機者が多い場合、入居までに時間がかかる場合があります
特別養護老人ホームに入居できる条件は、要介護認定を受けた人で、原則として要介護3以上の方が対象となります(緊急を要するなどの場合には、要介護3に満たない方でも入居できる場合もあります)。
さらに、定員29人以下の施設は介護保険制度の地域密着型サービスである「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」となり、その地域に住民票がある方でないと原則として入居することができません。
✔特別養護老人ホームは原則要介護3以上の方が対象です
✔地域密着型施設の場合にはその地域の方しか入居できません
特別養護老人ホームは介護が必要な方が入居できる施設であり、要介護度の高い方が多いことから24時間体制で十分な介護サービスが行われています。
移動、移乗など、身体を動かす際に必要な介助はもちろんのこと、食事、入浴、排せつ、生活支援、健康管理など生活に必要な介護はすべて提供されます。
このほか、必要な方に対しては身体機能を維持回復・減退を防止するための機能訓練、栄養ケア、口腔ケアもあります。
また、レクリエーションやイベントなども行われ、毎日の生活を楽しめる工夫がされています。
施設で最期を迎えられる方には看取り介護も行われます。
居室のタイプも様々で、多床型(4人ぐらいまでの共同で使う部屋)、台所やリビングなど共用部のあるユニット型(ユニット型個室とユニット型準個室があり)、個室に分けられます。
✔日常生活に必要な介護はすべて提供されます
✔身体機能が低下した方にも必要な介護が提供されます
✔部屋には個室、大部屋、ユニット型のタイプがあります
特別養護老人ホームは、古くから介護が必要な高齢者の措置施設としての役割を担ってきており、現在も運営主体や入所の制限があることなど、公益性が高い施設であることから入居にかかる費用が抑えられています。
まず、他の多くの高齢者入居施設を比較して大きく違うところは、入居一時金のような初期費用がかかりません。
また、日常のサービスにかかる費用の多くが介護保険による給付対象となっていることから、その自己負担分だけで済みます。
保険給付の対象とならない主な費用は、居住費(部屋代に当たるもの)・食費・日常生活費があり、基本的には自己負担となります(平成17年までは居住費・食費も保険給付の対象とされていました)。
ただし、所得の低い方に対して居住費・食費の負担額を軽減する措置があります。
合計では13~18万円程度となり、内訳は以下のようになっています。
費用 | 金額 |
---|---|
サービス費 | 一か月あたり23,280円(1日あたり776円) |
(要介護3・ユニット型個室・自己負担1割の場合) | 地域、施設の規模、居室のタイプ、自己負担額により異なります |
各種体制やサービスの加算 | 施設の体制、受けるサービスによって数千円程度 |
居室費 | 5~8万円程度(施設によって大きく異なります) |
食費 | 4~5万円程度 |
日常生活費 | 1万円程度 |
✔特別養護老人ホームには、入居する際の初期費用は特にかかりません
✔サービス費は介護保険が適用されますが、その他は自己負担となります
✔居室費と食費は所得に応じた負担軽減制度があります
介護保険制度の「施設サービス」では、特別養護老人ホームの(介護老人福祉施設)と並ぶもう一つの代表的なサービスに、「介護老人保健施設」があります。
この二つの施設の違いを確認してみましょう。
介護老人保健施設は、要介護1~5の方が対象です。
また、基本的にリハビリを中心とした医療を必要としている方向けの施設です。
今まで入院していた方が、その後の自立した生活のためにリハビリを行い、回復していくための入居となるので期間も原則は3か月間と短期間です。
要介護度だけで見ると特別養護老人ホームのよりも入居しやすいように見えますが、介護老人保健施設は在宅復帰のための一時的な施設です。
介護老人保健施設は、特別養護老人と比べて常勤医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士などのリハビリに関わる職員が多く配置されています。
これは今まで入院されていた方がリハビリ等を中心として、機能を回復させ、在宅生活に復帰するという目的のためです。
もちろん、日常生活に必要となる基本的な介護は行われています。
一方、特別養護老人ホームは生活するという場であるという性格が強く、日常生活中心のサービスです。
特別養護老人ホームも介護老人保健施設も、初期費用は不要で、居室費や食費は基本的に自己負担となることには変わりがありません。
しかし、サービスの提供量が多く、加算などにより介護老人保健施設の方が数万円程度高くなることが一般的です。
(介護老人保健施設は、日常必要な医療については、医療保険の適用とはならず、サービス費に含まれます)
✔介護老人保健施設は長期間入居する施設ではありません
✔介護老人保健施設は医療ニーズの高い方向けの施設です
✔特別養護老人ホームの方が費用は安いことが多いです
特別養護老人ホームの最大のデメリットと考えられるのが、入居までに時間がかかる場合が多いということです。
また、原則として要介護3以上の方という条件もあります。
結果的に、入居しにくい施設となっています。
また、常勤医師の配置義務がないことから、医療体制には限界があります。
特別養護老人ホームのメリットは、他の入居施設と比較してかなり低額で利用できるという点です。
また、所得に応じて自己負担分が減免となる制度もあり、経済的な不安が少ないことが挙げられます。
また、施設の規模が比較的大きく、必要な時に必要なサービスを受けることができます。
看取り介護にも対応することができ、長期間の入居でも安心です。
運営主体も公益性の高い法人に限定されていることから経営の安定性もあります。
✔入居時に初期費用もかからず、介護保険が適用され、月々の費用も比較的低額です
✔日中、夜間ともケアを受けることができます
✔施設で最期を迎える体制も整っていて、長期間の入居でも安心です
特別養護老人ホームは長期間入所することが前提です。
そのため、独居や高齢者のみの世帯、家族等も介護の負担を感じているなど、自宅での生活が難しくなってきた方におすすめできます。
また、入居の難しさも、時間的な余裕がある方(待てる方)でしたら問題とは感じないのではないでしょうか。
もちろん、費用面でもできるだけ抑えたい方にも向いています。
✔自宅での生活に限界を感じていて、長く過ごせる施設を探している方
✔入居までに時間がかかっても、費用を低額に押さえたい方
特別養護老人ホームについて詳しく見てきましたが、条件によってはメリットのかなり大きな施設です。
特に費用面とサービス面では、医療依存度がそこまで高くない人であれば十分満足できるものがあるのではないでしょうか。
また、入所しにくいとは言っても、一時期に比べると待機者数は緩和してきており、地域を選べば待たずとも入所できる施設も増えてきています。
場所にこだわりがなければ、生活してきた地域から少し離れて施設を探してみるという方法も考えられます。
終の棲家として施設を探している方は、まず特別養護老人ホームを検討しても良いのではないでしょうか。
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