介護職の給料が上がる介護職員処遇改善加算とは?どのくらいもらえるの?
介護職員の給料は「介護職員処遇改善加算」によって上昇しています。
ではどのくらいアップするのでしょうか。
本記事ではこの制度について説明し、給料がいくら増えるのか説明していきたいと思います。
■まとめ
介護職員処遇改善加算とは?
介護職員処遇改善加算とは、平成23年度まで実施されていた、「介護職員処遇改善交付金」に代わって設けられた制度です。
この制度は介護職員の処遇改善を目的に作られたもので、制度の創設により2015年から2018年の4年間で介護職員の平均月収が2万円もアップしました。
介護職員処遇改善加算は少し複雑な制度ですが、この制度の恩恵を受ければ毎月の給料がアップします。
転職を考えている人は今回の記事をしっかり読んで、より良い転職先を見つけるための一助としてください。
介護職員処遇改善加算取得の4つの基準
介護職員処遇改善加算を取得するためには4つの基準があり、この基準をクリアした数によって介護事業所が国からもらえる補助金額に差が生じます。
ここではその基準について解説していきましょう。
役職、職務ごとの賃金体系がしっかりしているかどうか
どんな組織にも言えますが、上位の職についている人間ほど給料面で優遇されているものです。
介護職員処遇改善加算の創設により、介護の現場でもこの原則がより徹底される傾向になりました。
フロアリーダーやケアワーカー、ソーシャルワーカーなど役職についた時の給料を就業規則に明記させて賃金体系を判断します。
役職に応じて待遇を改善していくことによって、介護職員一人ひとりが自分の将来を描けるようになるのです。
経験・資格による昇給制度が整備されているかどうか
介護職員処遇改善加算では、賃金テーブルの設置が求められるようになりました。
賃金テーブルとは、キャリアや役職に応じた給与体系を明確に表したものを指します。
例えば、勤続3年目なら基本給〇〇円アップですとか、社会福祉士の資格を持っていれば資格手当で〇〇円アップといった指標をわかりやすく一覧にしたものです。
賃金テーブルが明確化すれば昇給のタイミングを図れるため、職員一人ひとりの労働意欲向上にもつながります。
社員の研修や資格取得支援を行っているかどうか
高齢者と接する機会の多い介護の現場では、「ヒヤリハット」の事態と常に隣りあわせです。
介護事業を継続する上では、不測の事態に臨機応変に対応できる職員が必要不可欠でしょう。
介護職員処遇改善加算における補助金の支給要件では、スキルアップのための研修や資格取得支援の実施も盛り込んでいます。
事業所側が、職員それぞれのレベルに応じたサポートを実施して介護現場で活躍するスタッフの質を維持、向上させるのが狙いです。
賃金以外の会社内の環境改善に取り組んでいるかどうか
事業所は、賃金以外の面においても職員の環境改善に取り組んでいかなければなりません。
ある事業所では、職員の腰痛対策を目的にリフトを導入した結果、離職者を減少させることに成功しました。
以上4つの基準をクリアすることで介護職員処遇改善加算による補助を得られるようになり、職員の処遇を改善できるのです。
✔︎介護職員処遇改善加算は、介護職員処遇改善交付金に代わって設けられた制度
✔︎同制度の導入により2015年から2018年の4年間で介護職員の平均月収が2万円アップしている
✔︎介護職員処遇改善加算を取得するためには4つの基準を満たす必要がある
介護職員処遇改善加算が作られた目的
上の方でも少し触れていますが、介護職員処遇改善加算は介護職員の処遇改善を目的に作られたものです。
高齢化が進む日本社会では、一人でも多くの介護職員を確保しなければなりません。
なぜなら介護システムの破綻は、国民一人ひとりの老後の生活の破綻につながるからです。
そこで国は、同制度を打ち立て介護職員の保護と育成に乗り出しました。
この制度は、
- 1. 事業者が都道府県、または市町村に「加算届出」を提出する
- 2. 国民健康保険団体連合会(国保連)に対して「加算請求」をする
- 3. 都道府県、または市町村は国保連に支払いを委託する
- 4. 国保連が事業者に対し「加算支払」をする(給料の上乗せ分の費用を支払う)
というプロセスを経て賃金の改善が行われ、介護職員にお金が還元されるという仕組みになっています。
これにより介護職員の安定的な処遇改善がなされ、環境整備や給与アップにつながったのです。
しかしながら、介護の現場では今なお高い水準の離職率が続いており、介護労働安定センターが行った「介護労働実態調査」によると、平成29年度の介護職の離職率は年間で16.2%と他業種を上回るものでした。
そのため介護に携わる人員を確保するためにも、さらなる環境整備が叫ばれており今後、同制度の重要性がより高まっていくと見られています。
✔︎介護職員処遇改善加算は介護職員の賃金改善や環境整備を目的として創設された
✔︎介護職の離職率は、平成29年度の時点で16.2%と高い水準にある
✔︎今後も介護職員処遇改善加算の重要性がますます高まっていくと見られている
介護職員処遇改善加算で給料はいくらもらえるのか
介護職員処遇改善加算の創設により、介護職の環境改善や賃金改善が行われるようになったことを説明してきました。
では、具体的に制度によって給料がどれくらいもらえるのか気になるところです。
ここからは、介護職員処遇改善加算によって支給される賃金について解説していきます。
賃金の上昇幅は事業所の取り組み具合とサービスの種類によって変わる
実は、介護職員処遇改善加算で支給される金額は、どの事業所でも同じというわけではありません。
上記「介護職員処遇改善加算取得の4つの基準」の中で説明した基準をどれだけクリアしているか、そしてどんなサービスを提供しているかの2点で変化するのです。
介護職員処遇改善加算の区分
介護職員処遇改善加算には5つの区分が存在し、支給額がそれぞれ異なります。
上記4つの基準の達成具合により区分わけされ、国から支給される金額に差が生まれるのです。
ここで基準を再提示しつつ説明します.
例えば、
- 1. 役職、職務ごとの賃金体系がしっかりしているかどうか
- 2. 経験・資格による昇給制度が整備されているかどうか
- 3. 社員の研修や資格取得支援を行っているかどうか
- 4. 賃金以外の会社内の環境改善に取り組んでいるかどうか
これら全ての基準を満たしている場合、加算区分Ⅰに該当し、満額である37,000円相当が介護職員一人あたりの介護職員処遇改善加算の金額として支給されます。
さらに1と3と4をクリアしている場合、加算区分Ⅱになり、27,000円相当が支給されるのです。
加えて、1または3のどちらかと4をクリアしている場合、加算区分Ⅲとなり15,000円相当が、1、3、4のいずれかをクリアしている場合は、加算区分Ⅳになり13,500円相当が支給されます。
最後に、1、3、4のいずれも満たしていない場合は加算区分Ⅴとなり、12,000円相当が支給されることになります。
提供するサービスの種類によっても変化する
加算区分の他にも、事業所が提供するサービスの種類によって受け取れる金額に差が生じます。
例えば、訪問介護であれば上記加算区分ごとに、受取金額の5.5%~13.7%がさらに上乗せされるのです。
介護職の給料について詳しく知りたい方・給料を上げたい方は、介護職の給料・年収は安い?上げる方法をまとめました!の記事もご覧ください。
非常勤でももらえるのか
直接介護に関わっている職員であれば、非常勤の方でももらえます。
ご安心ください。
介護職員処遇改善加算の対象にならない職種
介護職員処遇改善加算の対象となるのは、直接介護を行っている介護職の職員です。
そのため、看護師や理学療法士など他業種の職員や、直接介護に携わらないケアマネージャーなどは支給対象から外れてしまいます。
しかし、現場では看護師が介護業務に従事することもあり、そういった場合には看護師も支給対象としてみなされます。
✔︎介護職員処遇改善加算の支給金額は加算区分とサービスの種類によって決定する
✔︎非常勤の職員でも直接介護に携わっていれば支給の対象となる
✔︎ケアマネージャーなど直接介護に携わらない職種は対象から外れる
加算された給料がしっかり支払われているか知る方法
加算された給料がしっかり支払われているのか、支給対象の職員なら誰でも気になることでしょう。
万が一、支給漏れになっていたら損をしてしまいますし、請求にかかる手続きで時間を浪費してしまいます。
お金に関わる大事なことですから、きっちり確認して余計な心配事は無くしてしまいましょう。
しっかり支払われているか知る方法
基本的に給与明細には、処遇改善加算という項目が設けられており、個人の受け取り分が適切に支給されているか判別できるようになっています。
支給にかかる明細書が無い場合は、不適切な支給にあたる可能性があるので事業所に対し説明を求めましょう。
受給できないケースもある
実を言うと、介護職員処遇改善加算では事業所が基準を満たしていても、お金をもらえないケースも存在します。
なぜなら、介護職員処遇改善加算では、事業所が得たお金を全額介護職員に支給しなければならないと定められていますが、どのように分配するかまでは規定されていないからです。
事業所の判断において、組織への貢献度が高い人に集中して分配することも考えられます。
もしも現在、あなたが求職中であるのなら、念のため介護職員処遇改善加算の分配方法について事業所に問い合わせてから求人の申込をしてみるとよいでしょう。
違反行為をした場合の措置
くり返しますが、事業所は介護職員処遇改善加算によって得たお金を全額職員に支給しなければなりません。
そのため、別の用途に使った場合、不正受給とみなされ、以下のような行政処分が科せられます。
- ・ 一部効力の停止
- ・ 介護サービス事業者としての指定取り消し
- ・ 介護報酬の返還
厳しいようにも思えますが、第一線で働くスタッフを欺いたのですから、これは当然の措置なのです。
✔︎加算された給料がしっかり支払われているか知るためには給料明細を確認するとよい
✔︎介護職員処遇改善加算の分配方法によって受給できない場合がある
✔︎違反行為をした場合、厳しい行政処分が下る可能性がある
事業所が処遇改善加算されているかを調べる方法
これから介護業界に転職を決めている人は、自分が希望する事業所が処遇改善加算されているか気になっているはずです。
そんな時は、人材紹介会社を利用しましょう。
人材紹介会社とは、いわゆる転職サイトや転職エージェントのことです。
これらのサービスを活用することによって、希望する事業所が処遇改善加算されているか、あらかじめ知ることができます。
さらに、人材紹介会社では面接日などの調整も代行してくれるので、時間が無い人には特におススメです。
介護事業所・生活関連情報検索
人材紹介会社を利用する方法以外にも、事業所が処遇改善加算されているかを調べる方法
があります。
それは、厚生労働省が提供する「介護事業所・生活関連情報検索(下記リンク参照)」というサイトを利用する方法です。
介護事業所・生活関連情報検索では、介護事業所に関する様々なデータが公表されており、事業所が処遇改善加算されているかだけでなく、該当している加算区分まで確認できます。
なお、このサイトは誰でも無料で利用できますし、会員登録などの手続きもありません。
✔︎転職エージェントを利用すれば、事業所が処遇改善加算されているか調べてもらえる
✔︎転職エージェントでは、面札日などの調整も代行してくれる
✔︎介護事業所・生活関連情報検索を使うことで事業所が処遇改善加算されているか判断できる
まとめ
介護職員処遇改善加算について解説してきました。
最後にポイントになる部分をまとめたので、おさらいしてください。
介護職員処遇改善加算とは、平成23年度まで実施されていた、「介護職員処遇改善交付金」に代わって設けられた制度です。
この制度が創設されたことにより、より一層現場で活躍する介護職員の保護が進みました。
また、介護職員処遇改善加算を取得するためには下記4つの基準をクリアしなければなりません。
- ・ 役職・職務ごとの賃金体系がしっかりしているかどうか
- ・ 経験・資格による昇給制度が整備されているかどうか
- ・ 社員の研修や資格取得支援を行っているかどうか
- ・ 賃金以外の会社内の環境改善に取り組んでいるかどうか
これらをどれくらいクリアしているか、そしてどんなサービスを提供しているかでもらえるお金に差が生じるのです。
一例を示すと、最も支給額が多い加算区分Ⅰでは37,000円、最も少ない加算区分Ⅴでは12,000円が支給されます。
自分が支給金もらえているかどうかを知るには、給与明細を確認しましょう。
そして、事業所が処遇改善加算されているかを調べるには人材紹介会社の転職エージェントや厚生労働省が提供している介護事業所・生活関連情報検索を利用するのがオススメです。
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